癌治療の道と法：基本に立ち返る治療哲學と実踐

序文｜大道至簡（最もシンプルな原則）、M0 とM1 に過ぎない／07
導読｜シンプルな癌治療の思考法／10
免責事項と著者の声明／14
第1 部 大道至簡篇．17
第1 章 『道徳経』に見る癌の生死／18
◼ 癌と道の四つの段階 18
◼ 腫瘍の基本情報 26
◼ 疫学 29
◼ 予防医学 32
◼ 癌検診 
◼ 症状と兆候 36
◼ 確定診断 38
◼ 道生一：癌なしvs 癌あり 39
◼ 一生二：転移なし（M0）vs 転移あり（M1） 50
◼ 自然に従う 77
◼ 道、法、術、器 80
◼ シンプルな癌治療の思考法 82
◼ バカ、重要なのはM0 かM1 か 83
◼ 嘲笑されなければ道に達しない 91
◼ 『道徳経』に見る癌の生死 93

第2 部 道法術器篇．95
第2 章 道の章：腫瘍学で最も重要な言葉「フィールド癌化」／96
◼ 多重癌 96
◼ フィールド癌化の意義 96
◼ フィールド癌化の最適な例：上部呼吸消化管 99
◼ 他の上皮癌におけるフィールド癌化 106
◼ 二つの害を比べて軽い方を選ぶ 112
◼ 癌は予防できる 119
◼ 利害を比較して選択する 121

第3 章 法の章：腫瘍学で最も重要な二つの言葉「予後と予測から見る中国の伝統思想と人生哲学」／122
◼ はじめに 122
◼ 「予測」と「予後」の定義 122
◼ 例を用いて説明 123
◼ 臨床応用 124
◼ 腫瘍科の世界vs 腫瘍科以外の世界 127
◼ 予後と予測の違い 128
◼ 『漁樵問答』：六つの道具を持っている者は、人である。魚を得るか得ないかは天命である 142
◼ 『道徳経』：聖人の道は為して争わず 143
◼ 『金剛経』：心を住すること無くしてその心を生ずべし 144
◼ ロボットが仏になる日 145
◼ Just Do It 147

第4 章 術の章：腫瘍学で最も重要な五つの言葉「初回、導入、補助、救済、緩和」／149
◼ 重要な概念 149
◼ 治療の目的 151
◼ 癌治療、主役は誰か？脇役は誰？監督は誰？ 152
◼ 初回療法（primary therapy） 153
◼ 救済療法（salvage therapy）vs 緩和療法（palliative therapy） 157
◼ 導入療法（induction therapy）＝ネオアジュバント療法（neoadjuvant therapy）vs 補助療法（adjuvant therapy） 163
◼ 転換療法（conversion therapy）：導入療法の一形態 168
◼ 地固め療法（consolidation therapy）：補助療法の一形態 169
◼ 維持療法（maintenance therapy）：補助療法と緩和療法の一形態 170
◼ 同時療法（concurrent therapy） 172
◼ 腫瘍内科と血液内科における化学療法用語の解説 175
◼ 結語 178

第5 章 器の章：局所治療の種類／179
◼ 基本理念 179
◼ 局所治療 179
◼ 外科治療の基本原則 180
◼ 放射線治療の基本原則 191
◼ その他の局所治療法 195
◼ 局所制御の最適化 197

第6 章 器の章：全身療法の作用機序／198
◼ まえがき 198
◼ 戦争シナリオ 198
◼ ホルモン療法 199
◼ 化学療法：敵を倒せば7 点、自分にダメージを与えれば3 点 200
◼ 標的療法：敵に弾切れを起こさせる 201
◼ 免疫療法：わが軍の回復 204
◼ 抗体薬物複合体：化学療法と標的療法の完璧な組み合わせ 207
◼ 精密医療：総合的な攻勢 211

第3 部 大道実践篇．213
第7 章 道と法に基づく治療の実践／214
◼ 美しい過ち 214
◼ 固形腫瘍の分類と治療 216
◼ 患者側からの挑戦：混乱の元凶 222
◼ WHO 分類：誰が「癌」かを定義する 224
◼ 医師側からの挑戦
プライマリ・ケア医：標準的内科診療における課題 231
病理医：診断確定における課題 250
放射線科医：病期分類における課題 285
腫瘍内科医ではない：癌治療の専門家ではない 308
医療チーム外の腫瘍内科医：最適ではない治療 319
医療チームの腫瘍内科医：最も適切な治療 328
◼ 道と法に基づく治療法の実践 331

導読—シンプルな癌治療の思考法
▌理論と経験
本書は、私が三十年間にわたって癌治療に取り組んできた経験と知見を集約したものであり、中国哲学と西洋腫瘍学を融合させた世界初の試みです。これにより、癌治療に対する全く新しい、独自の視点が開かれました。これらの中国哲学の視点は宗教的要素を含むだけでなく、思索の道具としても機能し、癌治療を哲学的なレベルに引き上げ、読者に治療の本質について深い考察を促します。

▌責任と信念
科学的実証を重視しつつ、癌の誤診や医療過誤を専門とする医師として、私は多くの貴重な命が不適切な医療によって失われるのを目の当たりにしてきました。これに対して強い責任感を感じています。癌は絶望的な病ではなく、正しい診断と治療を受ければ完全に治癒することが可能だと信じています。しかし、本書は命を蘇らせる魔法の書ではなく、三十年間の臨床経験から得た知識の結晶です。誤診や不適切な治療に苦しむ患者たちが最良の治療法を見つけ、前向きな気持ちを保つための一助となることを目指しています。

▌書籍の構成
本書は三つの主要な部分に分かれています。それぞれが「大道至簡篇」、「道法術器篇」、そして「大道実践篇」の三つのレベルから癌治療の真髄を説明します。

▌大道至簡篇：癌治療の真髄
第一部「大道至簡篇」では、『道徳経』の思想を借りて、「道、法、術、器」の枠組みを通じて癌の診断と治療の層次と原則を説明し、シンプルな癌治療の重要性を強調します。この中で、「道」は癌の有無の判断、つまり腫瘍学の始まりを意味します。「法」は癌の病期を決定し、M0 積極またはM1緩和の治療方針を決めることです。「術」は手術療法、放射線療法、化学療法など適切な治療手段の選択を指します。「器」はダヴィンチ手術、プロトン治療、化学療法剤、分子標的薬など、効果的な治療工具の使用を意味します。

▌道法術器篇：理論の深掘りと詳細な展開
第二部「道法術器篇」では、前述の理念を詳細に展開します。「道」は癌に対する基本的な理解を意味し、「フィールド癌化」の観念を通じて癌の原因、発病特性、診断方法、治療戦略、長期追跡を探ります。これにより、患者の一生を通じて総合的な治療戦略を立てることができます。
「法」は癌の病期を分けて治療を選択するための準則です。『金剛経』の「應無所住而生其心」の智慧を引用し、治療を選ぶ際には「予後」ではなく「予測」を重視する心構えを強調します。
「術」では、治療手段の選択だけでなく、治療の目的の多様性を強調します。手術、放射線療法、化学療法など、それぞれの治療は明確な目的を持ち、初回、導入、補助、救済、緩和の五つの目的で、患者に最適な治療計画を立てる指針となります。
最後に、「器」は治療を実施するための道具と技術を指し、局所療法と全身療法の種類を紹介します。

▌大道実践篇：真髄の臨床応用
第三部「大道実践篇」では、真髄を臨床でどのように応用したかを具体的な事例で示します。「道、法、術、器」の考え方を用いて様々な癌の病期にある患者を診断し、誤診や不適切な治療を受けた患者に治療の機会を提供し、「癌治療の道と法」を実現した過程を紹介します。これらの事例は、私が癌治療で直面した困難や挑戦、そしてそれを克服するための方法と心得を反映しています。

▌希望を伝える
本書を書く目的は、過去三十年間に学んだことを伝えるだけでなく、癌は絶望的な病ではなく、治療可能であり、予防可能であり、逆転可能であるというメッセージを伝えることです。本書が癌患者やその家族にとって信頼できる友となり、希望と力を与え、最適な治療法を見つけ出し、より良い生活を送る手助けとなることを願っています。また、本書が医学界の参考書となり、多くの医師や医療従事者にインスピレーションを与え、診断と治療の水準を高め、医療ミスや後悔を減らすことを目指しています。

▌共に読むことへの招待
本書を読むことで、私と一緒に「癌治療の道と法」を探求しましょう。諦めず、失望せず、妥協しなければ、癌を克服し、無病生存を実現できると信じています。

アジアの癌治療専門家、廖継鼎（リョウ ケイ テイ）医師
2024 年12 月