存在/不存在

序

物件之叛亂
飯沢耕太郎

　　われわれの日常には、さまざまなモノがあふれかえっている。それらは普通何かの用途を持っており、われわれは安心してそれらに接することができる。たとえば、煙草は吸うためのモノだし、ビール瓶はビールを入れる容器だし、傘は雨に濡れないようにするために使われる。

　　ところが、香港の写真家Hang TAMが撮影した写真を見ると、モノたちが日常の用途からはずれ、どうにもとらえどころがない不気味な姿をとることがあるのがわかる。それらは勝手に自己主張し、時にはこちらに襲いかかってきそうな暴力的な雰囲気すら漂わせている。

　　そんなモノたちの叛乱の様子を眺めていると、どこか懐かしい感じがする。かつて幼い頃、モノたちに名前が与えられ、秩序づけられる前の世界はこんな具合だったのではないだろうか。同時に、そこに写っているモノたちが、日本人の僕から見ると、とてもエキゾチックな姿をしていることにも興味を惹かれる。そこにあるのは、まぎれもなく２０１０年代の香港で見出された眺めである。Hang TAMの写真に写っているのは、ローカルでありながら
普遍的でもある光景なのだ。

　　この、ちょっとユーモラスなところもある写真シリーズは、これから先どんな風に展開していくのだろうか。期待を込めて見守っていきたい。

　　在我們的日常生活中，洋溢着各種各樣的「物件」。這些物件通常都具有各自的用途，我們也能夠很安心的接觸及使用它們。例如，煙草是用來吸的物件、啤酒瓶是盛載啤酒的容器、雨傘則是用來防止我們被雨水淋濕的。

然而當我們看看香港攝影師Hang TAM所拍攝的照片，卻可以看到當中的物件們脫離了它們的日常用途，並以一種難以捉摸的怪異形態被拍攝及呈現。它們自把自為地自我表現，有些時候甚至瀰漫着一股像要發動攻擊的暴力氛圍。

　　看著如此的物件叛亂，我嘗到一種懷念的情感。當我還是一個孩子，物件仍未被賦與名字、世界仍是無秩序的混沌狀態之時，不就是這個樣子的嗎？與此同時，身為日本人的我看到這些被拍攝的物件時，那股異國情調也深深的把我吸引著。當然，無可否認，在這裡呈現的是2010年代香港所發現的視點。HangTAM的照片所呈現的是一種本土而普遍的景象。

　　這一系列帶有少許幽默感的照片，今後將會有著怎樣的發展？我衷心地期待着。 （譯／李挽靈）