序
優良茶コンテストは、台湾茶産業にとって大きな行事である。互いに研鑽しあうことで製茶技術の向上を図るとともに、茶の価値を引き上げ、産地の経済発展を促進する意義を持つ。ただし、人間の感覚を主体とした評価(これを「官能審査」という)は、環境や審査員の心身状態といった外的、内的条件の影響を受ける。そのため、いかにその影響を軽減し、公正・公平・公開を実現するかを考えることは重要である。過去に農業部茶及び飲料作物改良場は民国91 年(2002)に『茶業技術推廣手冊-製茶技術』(茶業技術普及ハンドブック-製茶技術)を出版し、「茶葉品質鑑定」の章で、茶の官能審査について簡単に紹介した。これ以外、茶の官能審査に関する専門書はこれまで出版されていない。
本書は、茶及び飲料作物改良場で官能審査を担当してきた研究員の長年の経験と関連訓練研修講義の集大成である。品評員の素養、官能審査の原理、官能審査に関連する化学成分、審査に必要な設備、専門用語、審査手順等についての豊富な内容を、新たに分かりやすくまとめた。茶の愛好家やテイスティングに関心のある方々の参考となることを期待している。この本の内容と実体験とを照らし合わせていただけば、きっと本書の有用性を感じてもらえるだろう。
コンテストや品評会等のイベント、あるいは茶の売買における品質と価格の検討時にも役に立つはずである。また、本書では台湾茶フレーバーホイールも紹介している。茶をテイスティングする際には、フレーバーホイールを活用することで、台湾茶の香りと味を新たに感じていただきたい。
本書は、科学的な理論や知識、実用性を特徴としており、品評員や研究開発員、品質管理担当者、生産者及び茶業関係者の方々に活用してほしい。そういった方々が、不断の努力によって官能審査の技術を高め、1 杯の茶であろうとも1,000 のサンプルの評価であろうとも、泰然自若に茶に向き合う一助となることを願っている。
農業部茶及び飲料作物改良場 場長
蘇宗振 謹識
中華民国110 年(2021)9 月